楽天証券株式会社

楽天証券株式会社
楽天証券経済研究所所属のアナリスト今中能夫による今週1週間の国内株式市場の情報がつまった週刊レポートです。今後の相場の見通し、決算発表情報、個別銘柄の短期株価見通しなどを分かりやすく解説しています。
【楽天証券株式会社】

楽天証券投資Weekly 2013年5月31日 第39号

マーケットコメント:日経平均株価は続落。
日経平均は前週に続き下落:2013年5月27日の週の株式市場は、前週の大幅下落の流れを引き継ぎ、大荒れの展開となりました。
日経平均は週初27日から下げ、28、29日と上げたものの、30日に再び大幅下落となり、13,500円台になりました。前週末から30日終値まで1,000円以上下げました。5月23日のザラ場高値15,942.60円から30日のザラ場安値13,555.66円まで15%下げました。31日は少し戻しまして、前日比185.51円高の13,774.54円で引けました。
チャートを見ると、2012年11月14日(野田前首相が衆議院解散を宣言し安倍首相が円安発言を開始した日です。アベノミクス相場の起点です)以来下回ったことがほとんどない25日移動平均線を今の株価は下回っており、5日移動平均線が25日移動平均線を上から下へ突き抜ける「ミニデッドクロス」を示現しています。また、11月14日から日足を見ると、3段上げ(見方によっては4段上げ)の後で今回の下落となっており、見方によってはアベノミクス相場の第一波が終了したと見ることもできます。31日は185円高ですが、5月の月足は長い上髭を伴う陰線となりました。25日移動平均線の上昇が続いているため、上昇トレンドが転換したと考えるには早すぎますが、当面の株価の動きには注意が必要と思われます。
当面は調整か:当面の株価は、引き続き調整が続くと思われます。高値から20%程度の調整もありうると思われますが、その場合、日経平均は12,700円台となり、75日移動平均線を下回ることになります。
日経平均株価は11月14日終値の8,664.73円から5月23日ザラ場高値15,942.60円まで約6カ月で84%上昇しました。牽引役はアベノミクスですが、要するに円安と様々な分野での口先介入です。ところが、アベノミクスの柱の一つである大幅金融緩和を日銀が実行したところ、期待とは逆に長期金利が上昇する事態となりました。要するに「黒田緩和」はそういった面ではうまくいっていないといえます。
黒田緩和がうまくいっていない理由は、アメリカでQE3(金融緩和第3弾)の出口論が活発になった結果、アメリカの長期金利が上昇しており、日本の長期金利もこれに引っ張られているという側面があります。また、これ以外に、私の理解では、アベノミクスの帰結としての景気回復、物価上昇が起こった場合、自然な形で金利も上昇すると思われますが、もし金利上昇があるクリティカルポイントを超えた場合(例えば、政府予算の上で利払い費の前提になっている金利1.8%を超えた場合)、利払い負担の増加から、政府財政が困難に陥るであろうと言うリスクが、日本国債の投資家、保有者にはっきりわかるようになってしまったのではないかということです。日銀は月間7兆円の国債買い入れ枠を設定しましたが、これによって金利の先高観を持つ国債投資家は保有している国債を売り易くなりました。日銀は買い入れ枠の拡大と買い入れ頻度を多くするようですが、投資家にとっては一層売り易くなると思われます。その結果、長期金利上昇が傾向的に続く可能性があります。この場合、株式市場の調整はある程度長くなるかもしれません。
ただし、一方で株安は国債需要を増やしています。先週23日に続き再度株価が急落した30日は日本国債の利回りは低下しました。逆に、再び株価上昇が続いて景気がより一層良くなると、金利がより一層上昇してより深刻な問題が起こる可能性があります。皮肉な話ですが、日本のような名目GDPの2倍以上の政府債務を抱える重債務国が性急なリフレ政策を採ったときに何が起こるか、今回の金利上昇と株価下落がよく表しているのではないでしょうか。
内需関連、金融緩和関連よりも輸出グローバル関連に妙味か:今後、金利上昇が続く場合は、金利上昇に弱い不動産、倉庫、海運などの不動産関連株、大手銀行、ノンバンクなどの金融の各セクターの株価、例えばPERが高くなっている三菱地所三井不動産、あるいは、三井住友フィナンシャルグループ野村ホールディングスなどの大手金融株には逆風になると思われます。ただし、金利が低下すると内需関連、金融緩和関連が物色されています。31日はその傾向が出ています。
一方で、金利上昇にもかかわらず、為替レートは今のところ大きく円高になっていません。日銀の信認低下、日本国債の信認低下による円安が起きている可能性もあります。今の為替レート、即ち1ドル=100~101円、1ユーロ=130~131円が続くならば、一定の調整の後は、輸出グローバル関連、即ち自動車、電機、機械などの各セクターに投資妙味が出てくると思われます。具体的には、トヨタ自動車本田技研工業日産自動車富士重工業マツダ日野自動車いすゞ自動車デンソーアイシン精機豊田通商などの自動車セクター、ソニー村田製作所などの電機セクター、三菱重工業IHI日揮などの機械・プラント関連などです。
また、新興市場株は、大幅に下落した後、会社によって株価の動きに違いが出ていますが、これは各社のファンダメンタルズと人々の予想、期待を反映したものと思われます。ファンダメンタルズだけを反映したものではない場合、決算等のイベントで株価が下がるリスクもあり、これまで同様値動きの荒い状況が続く可能性があります。
今回の株価の調整は、アベノミクス相場第一波の終了、そして大きく上げすぎた反動という、テクニカル的な調整という側面と、長期金利の上昇という予期せぬ出来事を織り込んだものという二つの側面があると思われます。後者は、日本経済と株式市場、債券市場にとって最も重たい憂鬱な問題、約1,000兆円の政府債務と言う問題に直結します。
前出したように、株式市場の上昇トレンドが転換したと考えるには早すぎると思われますが、今回の調整は1~3カ月程度の少し長いものになる可能性もあります。株価、金利、為替の動きを注視したいと思います