2013年5月9日木曜日

JAMA -JAMAGAZINE-

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2.樹脂系複合材料による 省エネポテンシャル
 以上のことから、リサイクル可能な材料で、乗り物、特に自家用乗用車とトラックを軽量化することがマクロな環境負荷低減に効果的であることがわかった(トラックの軽量化は積み荷の増加という形で、結果的に輸送トンキロ当たりの消費エネルギー削減となる)。そこで本章では、日米欧で開発競争の激しい量産車用樹脂系複合材料を例に取って、リサイクルがその省エネにどのように寄与するかをLCAにより分析した結果を紹介する。
(1)軽量基礎素材の比強度・比剛性比較
図6は自動車の構造部材として考えられる各種材料の比強度と比剛性を比較したものである。なお、自動車の剛性部材では曲げ剛性での比較となるので、比剛性としてはヤング率の3乗根を密度で割った構造効率指標を用いている。同図より、金属材料は比強度にバリエーションがあるものの比剛性は一定であるのに対し、複合材料は繊維形態・繊維含有率・成形方法によって幅の広い特性を発現することがわかる。なお、ここでは炭素繊維強化熱硬化性樹脂(CFRTS)として航空機やF1カーで実績のあるものと、低コスト材として開発途上のものを例示した。また、炭素繊維強化熱可塑性樹脂(CFRTP)は開発中のものが多いが、その大きな狙いのひとつは低コストな板材の提供であって、炭素繊維の体積含有率によって力学特性以上に素材コストが大きく変動するため、目的に応じた繊維体積含有率の設定が重要となる。
図6から、CFRTSは強度部材、剛性部材ともに金属材料よりも大幅な軽量化が期待できることがわかり、CFRTPは強度で競合するものの剛性部材としての軽量化ポテンシャルが大きいことがわかる。図7は、複合材料のマトリックスとして用いられているいくつかの樹脂に関して炭素繊維の体積含有率を変化させてCFRP(炭素繊維強化プラスチック)の比曲げ剛性を示したものであり、図8と図9はスチールを1とした場合に同じ曲げ剛性を発現する板材の重量と板厚を示したものである。まず、図8から、スチール板はアルミニウムにより約半分に、マグネシウムにより約4割に、CFRPにより最高で約3割にまで軽量化できることがわかる。また、CFRTPにおいては一般に、高価な炭素繊維の体積含有率を増やしても曲げ部材の軽量化効果はそれほど上がらないこともわかるが、逆にあまり炭素繊維の含有量が低いと、図9に示されるように板厚が厚くなったり、弾性変形するひずみ範囲が狭く疲労しやすくなるため、用途に応じた適量の炭素繊維の含有が必要となる。
図6●各種構造用材料の比強度・比剛性比較
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図7●CFRP板材の比曲げ剛性に及ぼす炭素繊維含有率の影響
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図8●CFRP板材の対スチール軽量化率に及ぼす炭素繊維含有率の影響
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図9●CFRP板材の対スチール板厚比に及ぼす炭素繊維含有率の影響
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(2)CFRPによる車体軽量化例
もちろん、以上で示したようなCFRTSもCFRTPも量産車用には開発途上であるが、開発目標値とその効果がある程度明らかとなってきたことから、ここ数年で特に熱可塑性樹脂関連技術の向上がめざましい。
また、図10は炭素繊維生産量のほとんどを占めるPAN系炭素繊維の価格推移を示したものであり、1970年代のオイルショック後に各種輸送機器への適用が検討された際にはその高価格から航空機への適用にとどまったが、昨今の地球温暖化対策や石油価格の上昇を背景に自動車への適用が再検討されており、既存の基礎素材を代替可能な価格帯に近づいてきていることがわかる。
図11は、従来車の部品代替による段階的な車体軽量化の例であるが、CFRP特有の力学特性や一体成形性を活用してさらなる軽量化や安全設計が可能となることも報告されている。このように、コスト、設計技術、製造速度、リサイクル性の面からそれぞれ問題解決のための技術開発が進んでおり、超軽量量産車の実現可能性が高まってきていると考えている。
図10●PAN系炭素繊維の世界需要量と価格の推移
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図11●自家用乗用車のCFRPによる段階的軽量化の例
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(3)自動車のLCAで見るリサイクルの効果
自動車の軽量化が運転時の燃費向上に寄与することは明らかであるが、次に素材製造・組立・廃棄も含むライフサイクル全体で見たときの省エネ性について紹介する。
すなわち、まず図12はスチールベースのバス、トラック、乗用車についてのライフサイクル消費エネルギーにおける各段階の割合について示した図であり、いずれも走行時の消費エネルギーが圧倒的に多いことがわかり、現段階では、軽量化等による走行時の省エネが最も効果的であることが理解できる。
ただし、ここで考えておかなければいけないのは、先に示したような軽量化等の低燃費化技術が進み、さらにハイブリッド技術の導入により将来的に走行段階のエネルギー消費量が半分以下になったときのことである。図12から容易に理解できるように、そのような状況では素材製造と車体製造段階の省エネの効果が相対的に大きくなってくる。
図13は現在のPAN系炭素繊維の原単位を用いてCFRTS部品とCFRTP部品のリサイクル前後のエネルギー原単位(CFRP部品を1kg製造するために必要なエネルギー)を計算したものであり、リサイクルすることで極めて省エネな素材・部品として再生できることが読み取れる。またこのことは、高価な炭素繊維の再利用によりトータルで素材コスト削減が可能となることも意味しており、リサイクルCFRP部品の物性も乗用車の二次部材として適用可能なレベルにまで向上してきていることからも、CFRP部品のリサイクルはゴミ問題とコスト高の問題を同時に解決しながらLCA的にも優等生となる極めて優れたソリューションであると言えよう。なおここで、PAN系炭素繊維の世界生産量は図10に示されるように年間数万トンであり、これでは世界で毎年生産されている乗用車のうちの1%も軽くできず、今後は量産車用の低価格で低エネルギー原単位な炭素繊維の開発が進むと考えられるので、図13に示される数値は今後大幅に変わる可能性があることを付記しておく。
以上のことを踏まえ、CFRPにより40%の軽量化を行った乗用車のライフサイクルでのエネルギー消費量を計算した結果を図14に示す。すなわち、炭素繊維の製造エネルギー原単位の大きさに起因して、CFRTSだけで軽量化した場合には部材製造までのエネルギーが大きく、ライフサイクルでの省エネ効果は-32%にとどまること、CFRTPの併用(主として板材への適用)で軽量化率を損なわずに省エネ効果を向上させられること(この場合はLCAには出てこない低コスト化の効果のほうが大きい)、さらにはリサイクルによって省エネ効果が2割も向上することなどが読み取れる。
図12●各種自動車のライフサイクル消費エネルギー
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図13●リサイクル前後でのCFRP部品の製造エネルギー原単位
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図14●CFRP適用車のライフサイクル消費エネルギー比較
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おわりに
 今後の石油使用量の増加要因は主として非OECD諸国の自動車保有台数の増加である。本稿のまとめとして、21世紀最初で過去最大のモータリゼーション国である中国を例に取り、モータリゼーションの時期的予測とそれによる燃料使用量の増加、並びに超低燃費車やリサイクル技術の導入時期によりそれがどの程度抑制できるものかの検討結果を紹介する。
すなわち、図15と図16は中国における乗用車とトラックの消費エネルギーを予測し、前章に示したリサイクラブルCFRPの技術が早期導入された場合と導入が遅れた場合のエネルギー消費量の変化を予測したものである。図5に示したわが国の運輸部門におけるエネルギー消費量と比較すると、この種の省エネ技術の中国への導入効果は特に乗用車において大きく、また早期導入によりその効果はさらに高まることが読み取れる。また、この省エネ効果の2割がリサイクル技術によるものであるが、リサイクルは基礎素材の低コスト化という面からも安価な軽量車の早期実現に大きく寄与することにも注目したい。
図15●中国の乗用車による消費エネルギーの省エネ車導入時期による変化
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図16●中国のトラックによる消費エネルギーの省エネ車導入時期による変化
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