2013年5月8日水曜日

090313バックボードに代わるもの

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090313バックボードに代わるもの

早速ご意見いただきました
2009-3-14 sat
偶然、このサイトに入って、「バックボードに代わるもの」を興味深く拝見しました。私は、以前からスクープを使用した全身固定法を考案し、現場でも使用しており、全身固定にはこれに勝るものはないと自負しております。
最近の救急隊は、何かと言えばロングボード・ログロールなのですね。野蛮なアメリカのように銃創のない日本では、ログロールして背面観察などする必要が殆どありません。ましてや、自動車事故での車両内の背面負傷などもほとんどありません。
ITLSのインストラクターは、「なぜ、ログロールするか?」の意味も理解しないでログロールを指導している。私の家族であればログロールなどお断りです。まあ、書けばキリがありませんので、この辺で止めます。(改変あり)

 前回はログロールとZ字移動の危険性について述べた。Z字移動の危険性についてはJPTECセミナーでも全く触れられたことのない話だろうから、私を含め驚かれた方は多いだろう。今回はバックボード(ボード)に代わるものとしての新型スクープストレッチャー(スクープ)と、それを改良した機材を紹介する。
ログロールとログリフトの比較
ログロールの危険性については先月も述べたとおりである。困るのは損傷脊椎の動きが健常者では少なく脊損患者や死体で明らかに大きくなることである。そのため訓練で安全と思えるログロールでも患者の骨折部に対してはかなりの動揺をもたらしてしまう。死体を使った検討を詳しく見てみると、ログロールではログリフトに比べて頸椎損傷では首のねじれと左右への首の傾き、左右方向への首の平行移動が大きくなる1)。さらに胸腰椎移行部の検討では脊損のない健常人ではログロールとログリフトで脊椎の動きに差は見られなかったが、脊椎損傷を作った死体の場合には腰椎の捻れと左右への動きがログロールで有意に大きかった2)
なのになぜボードか
ボードは戸板が始まりであり、スクープの方がずっと新しい。またボードに乗せる手技であるログロールの危険性は1987年には論文として指摘されており3)、当時は胸腰椎移行部の骨折に対してはスクープかバキュームマット(マット)に乗せること、腰の両脇に枕を置いて腰の動きを抑えることが推奨された。しかしながら、古いボードが新しいスクープを駆逐した決定的な要因はアメリカの動向であろう。現在のITLSの前身であるBTLSが1980年代に発足し、これがバックボードを標準資器材としたことから、外傷にはボードという公式ができあがった。これは日本だけの傾向ではなく、手元にあるオランダの文献4)でもアメリカ追随を示している。最初はガムテープで固定していた頭をイモビライザーで固定できるようになったのもボードの普及に拍車をかけた。
スクープにイモビライザー
ボードにはイモビライザーを簡単につけることができる。これに対してスクープストレッチャーでは頭部部分が開くためイモビライザーをつけるのには時間と手間がかかった。しかし4-5年前にバックボードの真ん中が2つに割れる形のスクープストレッチャー(Ferno Scoop Stretcher Model 65-EXL, ファーノ)が販売され、イモビライザーに対する欠点も解消されている。
健常人を被検者とし、ファーノと一般的なバックボードでの頸椎と胸腰椎移行部の動きを比較した論文5)がある。バックボードに乗せる際にはログロールを行い、スクープストレッチャーに乗せる際にはログリフトを行っている。その結果として、ログリフトで首ののけぞりがログロールより大きかったのみで、他の方向の運動、首の回旋や左右の動きなどはログロールが大きかった。論文では被検者の満足度でもスクープはボードを有意に凌いでいた。この結果から筆者らはバックボードに代わりこのスクープストレッチャーを勧めている。また最近ではベルトコンベアー式のバックボードもでてきている1)。これなら体全体をログリフトしなくてもボードに乗せることが可能だ。
スクープにイモビを付けてみた
私はスクープといえばアルミ光沢と思っており、イモビライザーが付くタイプがあるとは全く知らなかった。さらに、イモビライザーが付くのはこのファーノだけだろうと思っていたら、付けようと思えばどんなスクープにも付けることは可能らしい。知人に頼んで実際に付けてもらった写真では、取っ手の部分にイモビライザーが付いている。このまま頭部固定して運ぶのもバスケットストレッチャーに患者を収容するのも思いのままらしい。でも救急隊員3人でログリフトは無理だろうと尋ねると、スクープならそれほど持ち上げなくても患者を乗せられるので3人で大丈夫らしい。
固定はマットが一番良い
マットはボードに比べて脊椎の固定力も患者の満足度も格段に高い。被検者にネックカラーを付けた上でバックボードもしくはバキュームマットに固定し、患者の体を前後左右に傾けた実験6)では、頭部、胸部、骨盤ともバキュームマットでの体のずれがバックボードの約1/5であった。データを見ると胸部のずれではバキュームマットでは6mmずれのに対してバックボードでは42mmもずれている。また被検者の満足度でもバキュームマットはバックボードの3倍の得点であった。
賢く使い分けること
マットの固定性と暖かさはボードやスクープとは次元の違うものである。しかし持ち運びが大変なことと脱気しなければ使えないことから現場で用いるのはかなり制限されよう。これに対してスクープ、特にファーノはものは今あるボードの欠点を補うものであり、携帯性にも優れることから将来的には今のバックボードを駆逐するポテンシャルを持っている。ボードの購入や買い換えを考えている署は候補に入れたらいかがだろう。
スクープもマットも今はボードに押されて出番がほとんどないかも知れない。でもそれぞれに特徴持っている。せっかくある資器材、患者に合わせて使い分けよう。
文献
1)J Athl Train 2008;43:6-13
2)Spine 2008;33:1611-5
3)J Trauma 1987;27:525-31
4)Ned Tijdschr Geneeskd 1994;138:2305-10
5)Prehosp Emerg Care 2006;10:46-51
6)Emerg Med J 2003;20:476-8


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