2013年4月24日水曜日

知財コンサルタントが教える業界事情(14):CFRPリサイクル技術の進展、そして次への展開を推察する! (1/2) - MONOist(モノイスト)

知財コンサルタントが教える業界事情(14):CFRPリサイクル技術の進展、そして次への展開を推察する! (1/2) - MONOist(モノイスト):

 前回の「CFRPの知財マップ/炭素繊維で世界シェア7割を占める日本企業の知財勢力図は?」では、軽量化による環境負荷低減構造材料として、軽量・高剛性・高強度の炭素繊維強化樹脂(CFRP)が自動車用構造材料として注目されていることを紹介しました。
 そこで今回は、航空機分野から自動車分野へと目を転じ始めた日本企業3社(東レ、三菱レイヨン、帝人系企業:帝人/東邦レーヨン/東邦テナックス)が、「CFRP普及の課題であるリサイクル」に、どう取り組んでいるかに注目してみたいと思います。今回も、出願年に注目したいので商用データベースを試用して調査します。
 なお、本稿では炭素繊維(Cabon Fiber)をCF、炭素繊維強化樹脂(Carbon Fiber Reinforced Plastic)をCFRPと略記します。

CFRP普及の鍵はリサイクル

 米国では現在、毎年400万ポンド(約1800トン)のCFRP廃材が発生していると推測されています。そして、欧州では年間500トン程度のCFRPの廃材が発生しており、しかもその内の10~30%はCFRP製造段階で廃棄しているといわれています*。
 日本では年間約10~20トンのCFRP廃材が発生しているそうですが、今後、Boeing(ボーイング)の「B787」のように、大量のCFRPを使用する航空機の開発/量産が計画されていますから、将来的には年間50~100トンのCFRP廃材が発生する可能性があると指摘されています*。

 これらのCFRP廃材推算量は航空機用CFRPだけの分ですから、自動車分野にもCFRPが採用された際には、リサイクルが大きな課題となります。そこで、「リサイクルの容易な熱可塑性樹脂マトリクスと組み合わせたCFRP」の採用が検討され始めたと理解できるわけです。
 それでは、「日本企業3社の乗物用CFRP特許」において、CFRPのリサイクルがどの程度意識されているかを調べてみましょう*。
* ここでは特許明細書中に「リサイクル」という単語が含まれている特許に注目しました。なお、リサイクルに類似する単語も含めた特許検索ではノイズに相当する特許が多かったため、今回の調査では近似的に「リサイクル」という単語だけを用いています。

 図1は東レ・三菱レイヨン・帝人系企業(帝人/東邦レーヨン/東邦テナックス)の乗物用CFRP日本公開系特許明細書中に、「リサイクル」という単語が登場する特許件数を、企業別に見たものです。
 図1の特許出願件数推移から、東レ、帝人系企業、三菱レイヨンの順にリサイクルが意識されており、特許件数の伸びから帝人系企業、東レの順にリサイクルにかかわる技術開発に進展があったと推察されます。
 この帝人、東レという順序は、「リサイクルに適した熱可塑性樹脂をマトリクス用いたCFRP」が公表された順序と一致しており*、特許出願は技術開発経緯を反映していると推察されます。
図1 東レ・三菱レイヨン・帝人系企業の乗物用CFRP日本公開系特許におけるリサイクル意識図1 東レ・三菱レイヨン・帝人系企業の乗物用CFRP日本公開系特許におけるリサイクル意識

CFRPの事業開発競争の行方 航空機分野では、先行した東レを帝人が追いました。そして、自動車分野では、熱可塑性CFRP(CFRTP)の技術を公表したことで帝人が東レにわずかに先行したようにも見えるわけです。しかしながら、自動車分野へのCFRP供給の本格化はこれからであり、しかも自動車分野には、アルミニウム合金、マグネシウム合金(不燃性マグネシウム合金)といった軽量金属さらには高張力鋼板といった競合材料も存在しています。
** 帝人ニュース・リリース
*** 東レニュース・リリース


コラム:CFの登場とCF事業開発の歴史

 現在注目されているようなCFは、1956年に、レーヨンを原料とするCF(米国登録特許:3,053775、登録日:1962年9月11日、発明者:William F. Abbot)が米国で開発され、UCC(Union Carbide Corporation)の子会社であるナショナル・カーボンからCFが販売されたことに始まったと推察されます。
 日本では1959年に、「PAN(polyacrylonitrile:ポリアクリロニトリル)を原料とするCFの製法」について、大阪工業試験所の進藤昭男・藤井禄郎・仙石正の3氏による発明(特公昭 37-4405、出願人:工業技術院)が特許出願されています。この特許公報には「出願人において、権利譲渡または実施許諾の用意がある」という記載があります。続けての出願となる、進藤・藤井・仙石特許公報(特公昭38-12375)には「出願人において、実施許諾の用意がある」と記載されており、大阪工業試験所が当初から民間への技術移転を想定して、技術開発を進めていたことが分かります*。
CF製造技術開発が示唆していること CF製造技術開発の歴史的事実を特許の観点から見れば、PANを原料とするCFは「迂回技術の開発」と見ることもできます。とはいっても、材料技術開発の観点から見れば、「先人の成果を精査して、将来の主流になれるPAN系CFにたどり着いた点」に注目すべきでしょう。
つまり、CF製造技術開発の歴史的経緯は、「技術開発の後発者であろうとも、先行者を越えて生き残ることのできる材料技術を開発できる」ことを示唆しています。


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